日経ビジネス2012年08月06日号
北九州市が日本製鐵、日本IBM、富士電機などと官営八幡製鉄所の跡地で約30軒の一般家庭と約50の事業所が参加して「スマートコミュニティー」実証プロジェクト。その内容は、需要家と新日鉄の天然ガス発電所や地区内に設置した太陽光パネルを結びつけ、エネルギーの有効活用を行うもの。
ここで注目されるのが、「デマンドレスポンス(需要応答)」と呼ぶ新しい電力調整技術。このデマンドレスポンスとは、電力の供給量に応じて需要家の行動を変化させ、家庭やビルなどの電力使用量をコントロールする技術。
このシステムの導入で、真夏の日中など需要がピークを迎える時間帯の電力使用量を15%減らすのが目的、例えば、翌日の予想最高気温を33度としたとき、午後1時~5時の電気料金を通常の5倍とするもので、午前中に掃除や洗濯を済ませるなど、需要予測で節電を促そうとするもの。
デマンドレスポンスにおけるダイナミックプライシングの方式には大きく分けて3種類ある。最も基本的なのが、例えば1キロワット時間当たり朝夕は10円、昼は30円、夜間は5円といったように時間帯ごとに事前に料金を決めておく時間帯別料金(TOU)。このほかに、夏の午後などピーク時の数倍以上に引き上げるピーク時料金(CPP)や、時間ごとなどのペースで刻々と料金変えるリアルタイム料金(RTP)の方法がある。
デマンドレスポンスの実証プロジェクトは北九州市のほか、横浜市や愛知県豊田市でも政府の補助を受けて順次動き出しつつあるよう。横浜市ではTOUとCPPに加えて、ピークタイムリベート(PTR)と呼ばれる方式も試す。
PTRは電気料金を変動させるのではなく、需給が逼迫した時間帯に節電した利用者に対して、お金など何らかのリベートを支払う仕組み。
コラム
日経ビジネス2011年12月19日号ではトヨタの特集を行っており、環境負荷が少なく、住む人に優しく、災害に強いスマートシティの構想に対して、トヨタは「できる限り関与をしていく」方針を示している。トヨタは、1975年に住宅に参入しており、米マイクロソフトなどIT企業との連携にも積極的で、未来のクルマ社会に向けた歩みとして、クルマは通信技術を介して、住宅や社会、人の暮らしとつながっていくとして、今後の新たな市場の街づくりに舵を切っていく。 またトヨタは、日経ビジネス2012年03月12日号でも三菱ケミカルホールディングス、東京大学、トヨタ自動車グループなどで太陽エネルギーを使い、人工光合成の実験に成功したと発表しており、水とCO2を原料として水素を取り出したり炭水化物を作り出すもので、今後10年かけて実用化を目指している。ちなみに水素は燃料電池に使われる。
このように自然エネルギーの活用は、今後エネルギー革命を起こすとともに、ピーク時で発電を行っていた効率の悪い発電や消費電力の見直しは、今後の新たな市場として注目される。これらの情報は今後も提供していきたい。